王子の盲愛
「あ、理世ちゃん!」
しかし、すぐ振り返った王弥。

「は、はい!」
「一つだけ、聞かせて?」
「え?」

「僕のこと、好き?」
理世に言い放った。

「え?そ、それは……」

「純粋に、好きか嫌いか聞きたい」
真っ直ぐ理世を見て言う。

「好き…だよ…」

「そう。良かった!
じゃあ…“また”ね!」
微笑んで手を振り、去っていった王弥だった。

意味深な王弥の言葉にずっと構えていたが、特に何もなく三ヶ月が過ぎた。
その間…挨拶程度は普通にしていたが、再度告白を受けることはなかった。

やっぱ、あれは夢のようなことだったんだ。

そう思い始めていた頃━━━━━━━

突然、王弥が理世の家に現れたのだ。
「理世!」
「ん?何?お母さん、そんな慌てて…」
慌ただしく理世の母親が、理世の部屋に駆け込んできた。

「や、や、や…」
「や?何?変な、お母さん…」
「八神様が━━━━━」
「あ、八神くん?
八神くんが、どうしたの?
テレビに映ってるとか?それは毎度のことでしょ?」
王弥は、八神財閥の御曹司。
テレビや雑誌に取り沙汰される程の男。

のほほんと、理世が答えた。

「いる、玄関、そこ!」

「は?お母さん、単語ばっかでわかんない。
何言って━━━━━━」
「いるのよ!!来てるの!!ここに!!」

「へぇー、来てるんだぁ。
………………えーーーー!!?」

今度は、理世が慌てて玄関に駆け込んだ。


「理世ちゃん、お待たせ!!」
そこには、スーツ姿の大きな花束を持った王弥がいた。

「八神くん?何故に?」

「迎えに来たよ!僕の奥さん!」

「………」

「………」

「………」
「……フフ…また、固まってる(笑)可愛い~」

「あの、お断りしたはずじゃ…」
「あ!それ、無駄だよ?
あのね!
理世ちゃんのお父様の勤めてる会社、買収したから!
それでぇ、理世ちゃんは政略結婚をさせられるのー!
理世ちゃんのお父様に良い役職つけて、その代わり理世ちゃんは僕のモノ!!
あー、長かった!
ここまでするのに、三ヶ月もかかっちゃった!」

「え?え?え?」

「てか!拒否なんて、できないから!
もう、理世ちゃんは、僕のモノなんだよ?」

「でも、こんなの……」

「だって、理世ちゃんが悪いんだよ?
友達からとか回りくどいこと言ったり、あろうことか…断ってきたでしょ?
ちょっと、カチンてきたの。
でも、大丈夫。
大切にするよ?
大切に、大切に、理世ちゃんだけを愛するって誓うよ!」

(やっぱこの人、冷静な人じゃない!!)
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