王子の盲愛
「━━━━はい、でも…王弥く……旦那さんに相談してからでいいですか?
はい、はい…わかりました」

後日成海から連絡があり、新道が会って謝りたいと言っていると言われた理世。
一度電話を切り、王弥に相談する。

「そう…理世ちゃんは、どうしたい?」
「成海先生には、会いたい。
本当にお世話になった人だから、王弥くんにも会ってほしい。先生がいなかったら、私…高校行かなかったかもなの。
学校自体に恐怖心があったから。
そうなると、王弥くんにも出逢えてなかった」

理世の両手を包み込むように握り、耳を傾けるように話を聞いていた王弥。

「僕も、理世ちゃんの恩師とちゃんと会いたいな。
でも……新道って女には、会わせたくないな…」
「私も、正直……怖い。
同窓会の時は、王弥くんが旦那さんって嘘をつかれて頭に血が上っちゃって、立ち向かっていけたけど……
ほんとは、新道さんの声を聞くだけで身体が震えるの……」
「そうだよね。
じゃあ…先生に会うだけにしよ?
僕のせいにして構わないから。
ほら、先生に連絡して?」
王弥は、理世のスマホを取り握らせた。

「………」
「理世ちゃん?」
「私も…けじめ、つけたい……」
「理世ちゃん……」
「王弥くんが、傍にいてくれるなら…私もけじめつけたい!」
理世は王弥を真っ直ぐ見て、はっきり言った。

王弥は理世の姿を見て、身体が昂るのを感じていた。
「理世ちゃん、カッコいい…!
益々、好きになる!
ほんっと、敵わない…!」



そして、また後日━━━━━━━━━
レストランで理世は、新道と対当していた。
テーブルの下で、隣に座った王弥が手を握っている。
王弥を見ると、静かに頷いてくれる。

“大丈夫だよ”と言っているかのように…………

「ほら、新道」
成海が、隣に座っている新道に声をかける。
「………あの、北城さ━━━━」
「八神!!」
「え?」
「君、わかってる?
理世ちゃんは、僕の奥さん!」

「あ…八神さん、ごめんなさい」
「うん…もう、いいの。
ただ、あの嘘は見逃せなかった。
でもどうして、あんな嘘を?」
「それは……」
「どっちにしても、いつかはバレるんじゃ……」
「………」

「後先なんか、考えてなかったんでしょ?
君、バカっぽいし!」

「は?」
王弥の言葉に、新道が王弥を見る。

「変なプライドだけ持った、バカ。
君って、可哀想な女だね。
まぁ……ちゃんと本気で心を入れ替えないと、一生一人のままだよ」
「なっ…!!!」

「てか!謝る気、ほんとにあんの?」
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