王子の盲愛
「なんで、こんなことになんの……?」
新道は、とぼとぼと家路についていた。

「君、可愛いね~俺達と遊ばない?」
「え?」
「こう見えても俺達、金は持ってるんだよ~」

(金持ち?)
新道は今“金持ち”に敏感になっていた。

やはり、悔しくて堪らないのだ。
理世に負けることが………

「行く!行きたい!」

「おっ!!乗りが良いねー!行こ?」

新道が連れていかれたのは、ある地下にあるバーだった。

「ここは?」
「うーん、俺達の息抜き場みたいな感じかな?」
「御曹司って、親からのプレッシャー凄いからねー」
「そっか…!」

確か、お母さんもそんなこと話してたなと考える新道。
「君、名前は?」
「え?あ、新道 里麻です」
「新道?」
「え?は、はい」

明らかに男達の雰囲気が変わった。

「へぇー、君なんだー」
「え?」

「王弥様の機嫌を損ねさせた女」

「かなりキレてたもんなぁ、王弥様」
「俺なんか、当たられて大変だったし!」
「あーそうそう!お前…パシり、大変そうだったもんなぁ」
「そうだよ!いつもはあんな事言わない人なのに、かなり絡んでたもんなー」
「だよな。基本的に人や物事に興味を持たないもんな、王弥様」

「あ、あの……」
「あ、ごめんね。
君、ある意味凄いよね?」
「え?」
「“八神 王弥”を怒らせるんだから!
そんなこと、俺達は無理だから!」
「うっ!考えただけで、恐ろしい~!」
男達が、ブルブル震えている。

「そんなに恐ろしいんですか?」
新道は窺うように言った。
「王弥様って、精神的に大きな傷を与えるやり方するんだ」
「俺達は自殺した奴や鬱になった奴、いっぱい見てきたんだ」

新道は、パーティでのことを思い出す。
あれは王弥が、わざとみんなの前で言ったのかもしれない。

「でも、なんで……あの子ばっかなの…!?」
つい、ポロッと言葉が出てしまう。
「奥様のこと?」
「え?あ…」
「どんな人なの?」

「会ったことないんですか?」
「うん。
“あの”王弥様が、会わせてくれると思う?」

「地味な女です。
面白くないし、どこが良いのかわからない。
八神様ってあんなに素敵な人のに、なんで“あんな女”を選んだのかわからない」

「言うねー!」
新道は一度言い始めると、止まらなくなっていた。

「悲劇のヒロインぶって、同情を集めようとしてバカみたい!何させてもトロいし、うざいし、弱いし…」

「あとは?」

「成海さえいなかったら、今頃自殺してたはず。
そうすれば、私がこんな惨めな思いしなくて済んだのよ!!全部!!北城 理世と成海のせいよ!」

新道は、今までの鬱憤を吐き出すように言い放った。

「━━━━━ですって!王弥様」
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