王子の盲愛
理世は、そのまま王弥に車に乗せられ………

「ここが、僕達の家!」
と、マンションに連れていかれた。

中は、二人で住むには広すぎる空間が広がっていた。

「はい、理世ちゃん!
書いて?」
と、婚姻届を書かされ、

「はい、理世ちゃん!
はめて!」
と、結婚指輪をはめさせられた。

もう……断るなんて、できなかった。
それは━━━━━━

「あ!yes以外は、受け付けないから!
今後…僕を拒否したら、北城一族…不幸にしてやる!」

という…賢い王弥とは思えない、子供じみた脅しを言ってきたからだ。

でも、その鋭い視線が“本気”を物語っていた。

そんなこんなで、理世は王弥の妻になったのだ。


ソファに並んで座り、お茶をしている二人。
「八神くん」
「王弥!」
「え?」
「王弥って呼んで!」
「王弥くん」
「なぁに?」
「なんか……賢い王弥くんとは思えない結婚の仕方だね。王弥くん程の人なら、もっと上手くできたんじゃ……」

「そうだね。
なんか、焦ったの。
怖くて……とにかく早く、理世ちゃんを手に入れたかったの。
自分でも、びっくりだよ?
冷静でいられなかったんだから」

「私はただ、ゆっくり知り合っていきたかったんだよ。確かに、私も王弥くんのこと好きだよ!
高校の時に初めて見て、あまりにもカッコ良くて見惚れちゃったし。
王弥くん、こんな私のことよく気にかけてくれてたし。だから、こんな脅しみたいなやり方しなくても、きっと━━━━━━━」

「いいの!!
どんなに汚ないやり方でも、理世ちゃんが手に入るなら何でもする!」

王弥の真っ直ぐな想いと視線が、理世を捉えて離さない。


「王弥くんは、いつから私のこと意識してくれてたの?」
「ん?高二の時の、学年末の期末試験から」
「あー、王弥くんが体調不良で吐いた時?」
「うん、そうだよ!」

高校二年の時の学年末の期末、最終日。
王弥は体調を壊していて、教室内で嘔吐したのだ。

それを介抱し、しかも嘔吐物を片付けたのが理世だった。
同級生や教師までもが躊躇する中、理世は嫌な顔一つせず後始末を全ておこなった。

その姿に心を打たれた、王弥。

それから王弥は、一途に理世を思い続けてきたのだ。

「でも、それだったら益々…その時に告白してくれてたら、今頃普通に婚約者とかなれてたかもなのに……」

「でも理世ちゃん、その時彼氏いたじゃん!
しかも、ラブラブの!」

「え?」
「え?いたんでしょ?
まぁ…僕も結婚を意識してたし、僕、告白したことなかったから、どうしていいかわからなくて……
断られたらどうしようって……そんなこと思ってるうちに大学生になっちゃったんだ」

「え?え?待って!
その頃、彼氏いなかったよ…」

「はぁぁ!?」
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