王子の盲愛
「あの、ここいいですか?」
王弥と理世の向かいの席に座ろうとする、女性客二人が声をかけてきた。

「あ、どうぞ!
王弥くん!足引っ込めなきゃ!」
「………」
無言で、女性二人を見上げる王弥。

「あ、あの…」
女性達が、戸惑っている。

「席を回転させればいいでしょ!?」
「あ、そっか!
どうすればいいの?ごめんね…私、よくわからなくて……」
理世が慌てて、立ち上がろうとする。

「あ、違うよ!僕達じゃなくて、向かいの方!
僕達が回転したら、進行方向から逆になるよ?
理世ちゃん、酔っちゃうからダメ!
ごめんね。理世ちゃんに怒ったんじゃないよ?」
王弥が理世を止め、頭をポンポンと撫でた。

「あ、いえ…このままで私達大丈夫です!」
そう言って、向かいに座った女性二人。

「あ、そうですか?じゃあ…このままで……」

「……/////」
向かいに座った女性客が、王弥に見惚れている。
異様な光景だろう。
理世は景色を見ながら王弥と話し、王弥は理世から目を反らさず、女性客は王弥から目を反らさない。

「━━━━━━━お二人は、ご夫婦なんですか?」
「え?あ、はい」
「えー見えない。恋人同士に見える」
「そうですか?」
「お似合いですね!素敵……」
「フフ…王弥くん、お似合いだって!
ありがとうございます!」

“お似合い”なんて、言われたことのない理世。
いつも“つり合わない”とばかり言われ続けていた理世。
女性の言葉に、満面の笑みで王弥に言った。

「うん!僕達、お似合いだもん!」
王弥も微笑み、理世の頭をポンポンと撫でた。

「……/////」
そんな王弥を見て、女性達は見惚れる。
「………何?さっきから…!」
王弥は、理世を見つめたまま女性に言った。

「え…あ…ご、ごめんなさい……」
慌てて、謝罪し目を反らす女性達。

「謝ってほしいんじゃない。理由を聞いてる」

「ラブラブだなって……」
「うん、そうだよ。僕達は相思相愛だから」
「ちょっ…////王弥くん!は、恥ずかしいよ…////」

「だって、ほんとのことでしょ?」
「……////」

「へぇーいいなぁ…!」

「………でも、どっかで見たことあるような………?」
「え?あ、えーと…」
つい一ヶ月前まで、テレビに出ていた王弥。
理世が言葉を濁していると………

「あ!八神 王弥!」
「……てことは、こっちが奥さん?」
女性が王弥と理世を見ながら、声を張り上げた。

「あ……」
(どうしよう…違うって嘘つくのもなぁ……
でも、もう…王弥くんは有名人じゃないし……)

「ねぇ!!」
そこへ王弥が、鋭い視線を言葉を女性達にぶつけた。

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