王子の盲愛
「うん」
「え?ほら、毎日迎えに来てたじゃん!男が」

「え?あー、その人はお兄さんみたいな人。
家の隣に住んでたの。だから、一緒に帰ってて…」
理世は、宙を見上げて言った。

「そうだったの?
でも、スッゴく仲良さそうだったよ!」
「それは、幼なじみみたいな関係だし、本当のお兄さんみたいな人だから!」

「なんだ、そうだったんだぁー!」
「うん、それに…彼、彼女さんいるし。
高校生の時からだから、もう…長いよ!」

「そうなんだ。
あの時は、ほんとありがとね!
僕、ほんと嬉しかったんだ。
あんなの、普通…退くでしょ?」

苦笑いし王弥が言うと、理世は微笑んで首を横に振る。
「そんなの関係ないよ。
私、亡くなったおばあちゃんが胃腸が弱い人でよく吐いてたの。私とお母さんが、世話してたから。
慣れちゃってて」

「そっか。でも、嬉しかった!
だから、それから理世ちゃんのことが頭から離れなくて、ずっと目で追ってた。
理世ちゃん、控え目だけどよく人のこと見てて優しくて……日に日に好きになっていったんだよ」

少しずつ、王弥の顔が近づいてくる。
「え……王弥…く…」

ゆっくり口唇が重なった。
チュッと音がして、王弥は口唇を離し理世の額に自身の額をくっつけた。

「理世ちゃん、大好きだよ。
汚ないやり方だったけど、僕のお嫁さんになってくれてありがとう!」

「……/////」
「理世ちゃんが傍にいてくれるなら、何でもするよ!だから、僕から放れないでね?」


「あ!理世ちゃん、ダメ!!」
それから、夕食の準備をしようということになり、王弥が“何でも、一緒にしようね!僕達、夫婦なんだから”と言い、一緒に調理し始めた二人。

理世が包丁で野菜を切ろうとすると、王弥が突然呼び止めた。

「へ!?な、何!?」
「包丁!!危ない!
理世ちゃんはお皿とか出したり、盛りつけ担当!!」
「え?そんな…大丈夫だよ!」
「ダメ!!包丁と…あと、コンロも触らないで!!」
「でも、IHだよ?」
「でも、危ない!!
いい?理世ちゃん。
僕の言うこと、聞いて?
できるよね?」
まるで、子どもに言い聞かせるように言った王弥。

それからも…………
「あ!理世ちゃん、危ない!!」
「はい?
荷物を運ぼうとしただけだよ?
しかも、これ…私の引っ越しの荷物だし」
その日のうちに理世の私物が実家から届き、自室に運ぼうとした理世。

また、呼び止められたのだ。
「そんな重たい物持っちゃダメ!!
手や腰、痛めるよ?」
「えーー、そんな……」

「理世ちゃんは、危ない事は一切禁止!!
何でも、僕に甘えること!!
いい?」
「………」

あの、鋭い視線…………
「理世!!返事!!」
「は、はい!」

結婚初日から……王弥に誓約させられた理世だった。
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