クリスマスイブにベルが鳴る
「…もう遅いしそろそろ帰って寝な。
灯油のポリタンク1個あるから運ぶわ。
西野には重いしょ」
そう言いながらソファから立ち上がった瞬間、ギュッと手首をつかまれた。
振り返ると、ソファに座っている西野と向かい合うかたちになる。
「奈良くんてさ、優しいよね。
みんなにこうなの?
…こんなふうに優しくされると、自惚れちゃうんだけど」
握られている手首にさらに力が入った。
ゆっくり、しゃがみこんで西野の顔を下から覗くと。
西野は今までに見たことがない真っ赤な顔で、目を合わせてくれない。
「俺が優しいのは」
「やっぱり、何でもない」
握っていた手首から手は離され、その顔は隠される。
でも真っ赤な耳は隠れていない。
両手を握って、顔から手を離すと目が合う。
「…やっと目合った。
西野にだけだよ」
「え?」
「俺が優しいのは、西野にだけ」