偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「相変わらず早いね」
デスクの向こうから顔を覗かせたのは、小児科医の高城太郎(たかしろたろう)

「お疲れ様。太郎は当直?」
こんな時間に医局にいるってことはきっとそうだろうと声をかけた。

「あぁ。昨日は救急からの呼び出しでほとんど寝れてない」
「そうか、それは悪かったな」

こいつは大学病院へ来てから知り合った同い年の友人。
付き合いの良くない俺にもめげずちょくちょく声をかけてくれる珍しい奴だ。

俺は普段から酒を飲まない。
もちろん付き合いや接待で酒席に出ることもあるが、極力アルコールは口にしないことにしている。
だから、飲みにもいかない。
当然仲間からは『付き合いの悪い男』って見られている。

「昨日は休みだったんだろ?珍しいな、敬が休みを取るなんて」
「そうか?」
「そうだよ」

で何があったんだと、太郎の目が尋ねる。

「見合いだよ。いつまでもフラフラするなって強引にセッティングされた」
こういう噂はどうせすぐに耳に入るんだろうと自分からバラした。
「それはお気の毒さま」

本当だよ。
何でお見合いなんて・・・
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