偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~

トラブル…敬

体には倦怠感があり動くのもつらいはずなのに、真理愛の足取りはいつになく軽い。

「本当に大丈夫なのか?」
まるで小躍りする様に部屋の中を動き回る真理愛が逆に心配になった。

「大丈夫。少し体がだるいだけで、元気だから」
「ならいいけれど、無理するなよ」
「うん。敬さ」
ん?
「敬も、早く支度をして」
「あ、ああ」

今朝、朝食の後、
「俺も真理愛って呼ぶんだから、真理愛も『敬』って呼んでもらえないか?」
と頼んでみた。
決して関係を持ったからってわけではないが、さん付けで呼ばれるのは他人行儀な気がして気になった。
「わかった、『敬』って呼ぶわ」
真理愛は即答してくれたけれど、いざとなると呼び慣れなくて、さっきから言い直しが続いている。
それはそれで、かわいくもあるんだが。

「それで、今日はどこへ行くの?」

「海岸沿いにいいイタリアンの店を見つけたんだよ。眺めもいいしシーフードのピザがおすすめなんだ」
「へー、行ってみたい」
「だろ?時間があれば海岸を散歩しようか?」
「うん」

こんなに楽しそうな真理愛を見たのは初めてだな。
先のことを考えれば前途は多難だが、今日一日は楽しもうと俺は決めていた。

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