偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
見合いなんてしたくはなかった。
まだ結婚する気もないのに形だけ会うなんて相手にも失礼だと思えたし、何よりも煩わしいと感じていた。

「もしかしておじさんか?」
少しだけ表情を曇らせる太郎。

「ああ。勝手に休みを入れられて、強引に連れて行かれた」

さすがに俺も不機嫌を顔に出してしまった。

俺の母さんの兄であるおじさん。
母さんが駆け落ちをして家を出て、苦労して早死にしたのを自分のことのように思っていて、身代わりのように俺の世話を焼いてくれる。
そのことについては感謝の気持ちしかない。
昨年父さんを病気で亡くした俺には唯一の肉親だし、子供のいないおじさんとおばさんが俺をかわいがってくれるのをありがたいと思っている。
でも、

「イヤならイヤって、言えばいいだろう?」
「そんなことができれば、苦労はしていないさ」

善意から差し出される手をはねつけることのできる人間なんて、そうはいない。

県立病院の副院長をしているおじさんは大学病院にも顔が利いて、俺の上司である救命部長に直接休暇の依頼をしてしまった。
だから、俺は自分のシフトを見て初めて休みを知ったし、そうなればお見合いを断ることなんてできなかった。
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