偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「わかりました。少し時間をください」
そう言うのが精一杯だった。

おじさんは険しい表情のまま黙ってしまった。

真理愛からお母さんのことはいくらか聞かされている。
突発的なことに混乱しやすくて、母性の部分が少し欠落気味。
病気とまではいかなくとも、子供にとっては困った親。
小さな頃にはネグレストに近いこともあったのだと言っていた。
それでも、旦那さんである高城先生がそれを受け入れている以上は、外野から何も言うことはできない。
真理愛だけが貧乏くじを引くようでかわいそうではあるが、親子でいる限り諦めるしかない。

「今日はこのまま真理愛を連れて帰ります。できればもう会わないでいただきたいし、真理愛をマンションに泊めることはやめてください」
「わかりました」
「今度もし昨日のようなことがあれば、どんなに夜中でも私が迎えに行きます」
「はい」

真っすぐに俺を睨みつける高城先生に何も言い返すことができないまま、話し合いは終わってしまった。
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