偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
大学を卒業するまで、俺に親戚なんていないと思っていた。
病気がちの父さんを抱え、貧乏しながら必死に生きてきた。
高校になってからは一人暮らしだったし、医学生時代も寝る間を惜しんで働いて学費を稼いだ。
自分の境遇を不幸だと思ったことはないが、苦労はしてきたと思う。
そこに現れたのがおじさんだった。
「君の力になりたいんだ」って言葉に何度も説得され、俺はおじさんが副院長を務める病院へ就職した。
そのことを後悔するつもりは無い。

「あんまり我慢ばかりしていると、ハゲルぞ」
「うるさい」

ペシッと、近くの書類で太郎の頭をはたく。

我慢ばかりしているわけじゃない。
絶対に譲れないところは、はっきりと主張している。
それでも、2年前の事件でかけた迷惑を考えると、俺は何も言えなくなるんだ。
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