偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「家を出たら敬のところに行くのか?」
「行かないよ」

そんな事すれば敬に迷惑がかかってしまう。
敬のことは大好きだけれど、好きだからこそ不幸にはしたくない。

「なあ真理愛、お前は敬のことをどのくらい知っているんだ?」
お兄ちゃんがまじめな顔をして聞いてきた。

「どのくらいって?」

「知り合ったのはずいぶん前なんだよな?」
「うん、4年前くらいかな」

私はまだ高校生だったし、敬も研修医が終わったばかりの頃だった。

「じゃあ、事件のことも知っているのか?」
「事件?」
「ああ。2年前の県立病院の」
「え?」

2年前の、県立病院の事件と言えば、あの毒物混入事件。
当時はすごく騒がれたから私の記憶にもある。
犯人は県立病院の研修医で、被害にあったのは病院のスタッフ。
でも、実際には病院内で起きるパワハラやモラハラに我慢できずに起きた事件らしいって噂だったはず。
あの後県立病院の患者さんは激減した。

確かに、当時敬は県立病院に勤務していた。
でも、だからって・・・

「敬が、関係しているの?」
「ああ」

ゴトンッ。
持っていたマグカップを落としそうになった。
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