偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「それともう一つ」
「まだあるの?」

事件の話だで十分驚きの内容だったし、敬が自分を犠牲にしてでも守りたい女性がいたこともショックだったのに、これ以上何があるっていうんだろうか。

「あいつが天涯孤独なのを知っているか?」
「うん」

お母さんは小さいころに亡くなって、長く闘病していたお父さんも数年前に亡くなったって聞いた。

「でも、おじさんがいるんだ」

ああ、そうだった。
奨学金を勝手に返済してくれたおじさんと、料理上手で面倒見のいいおばさん。

「そのおじさんが県立病院の小鳥遊副院長なのは知っているか?」
「ええぇー」
知らない、初耳。

小鳥遊副院長って、私がぶつかりそうになった車に乗っていたおじさん。

「知らなかったみたいだな」
「うん」

小鳥遊家は地元の名家。さすがに私だってそくらいは知っている。
元々は大地主で、今でも広大な土地を所有しながら建設会社と総合商社を起こして手広く事業をしているはず。
今の当主はお医者さんだから事業は主に分家の当主が行っているって聞いた。

「小鳥遊副院長には子供がいないし、あいつのおふくろさんが小鳥遊本家の直系だから、ゆくゆくはあいつがあとを継ぐことになるかもしれない」
「そうなんだ」
< 143 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop