偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「引っ越すのか?」
「うん」

週末の土曜日。
俺は真理愛を自宅に呼んだ。

高城先生に約束した手前昼間にどこかで会うことも考えたが、2人になれるところの方が落ち着くだろうとマンションにした。

「高城先生がよく許したな?」
この間会った時の感じでは一人暮らしなんて絶対に許すと思えなかったのに。

「お兄ちゃんが説得してくれたの」
「太郎が?」
「うん。おじさんも最初は反対していたんだけれど、お兄ちゃんが『今行かせてやらないと、真理愛は家を飛び出すかもしれない。そうなったら2度と高城の家には戻らないぞ』って言ってくれて」
「へえー」

すごいな。
実の親子ならそんなことも遠慮なく言えるんだ。

「お兄ちゃんは高城の唯一の跡取りだから、そのことを引き合いに出されるとおじさんもあまり強いことが言えないのよ」
「ふーん」
太郎もなかなかやるな。

「敬も引っ越しをするんでしょ?」
「ああ。太郎に聞いたのか?」
「うん」

きっと太郎からおおよその話は聞かされているんだろうが、俺は改めて自分の身の上話をすることにした。

「今まで真理愛に話していなかったが、きちんと説明するから聞いてくれ」
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