偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「おじさんに金を出してもらったことに恩を感じているのは事実、でも今小鳥遊にの家に入るのはおじさんとの約束があるからなんだ」
「約束?」
真理愛の顔が緊張する。

「真理愛は2年前の毒物混入事件を知っているか?」
「ええ、テレビでも騒がれていたし」
「それに俺がかかわっているのは?」
「お兄ちゃんから少しだけ聞いた」

そうかじゃあ話が早い。

「俺の大学からの友人で和田環、今は皆川環って医者がいるんだ」
「それって、事件の被害者になった女医さん?」
「ああ。事件を起こした塙は環のことが好きだった。多少歪んだ愛情表現だったかもしれないが、まっすぐに環を追いかけていた」
「じゃあ、どうして?」

そうだよな好きな人に危害を加えるって、おかしな話だと思う。
でも、実際世の中にはいるんだよ。

「それまですべてが順風満帆に行き過ぎて挫折をしたことがない人間が、初めて自分の思い通りにならないことに出会ったんだ。環には好きな人がいて塙のこととを恋愛対象とは思っていなかったし、ちょうど研修医になりたての塙は仕事でも壁にぶつかっていた」
「そんなことで事件を起こす人がいるのね」
「ああ」

人の気持ちなんて本人にしかわからない。
周りから見ればどんなに些細なことでも、塙にとっては強いストレスだったんだろう。

「敬は環さんって方が好きだったの?」
「え?」

まさか真理愛からそんなことを聞かれるとは思わず、驚いた。
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