偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
2年前。
頭を下げる俺に、「わかった出来るだけのことはする。その代わり、いつの日か小鳥遊の後継者として家に入ってほしい」とおじさんが言った。
失うものなんて何もない俺は、すぐに了承の返事をした。
その後俺の出向が決まり、環が公に処分されることはなかった。
ただ、事件のうわさから県立病院の患者は激減し、おじさんも経営陣としての責任を問われた。
俺も、環も、おじさんもみんなが大変な思いをした。

「私の知らない敬がまだいるのね」
「そうだな」

長く生きている分、それなりに過去だってある。
俺だってただの男だ。

「真理愛にもこれからいろんな出会いが待っているよ」
俺なんかよりいい男にきっと出会えるはずだ。

「そうかな」
「そうだよ」

いくら好きでも、未来ある真理愛の将来に俺が踏み込んではいけない。
俺は必死に自制心を保ちながら、自分を押さえた。

できることなら、真理愛と離れたくはない。
ずっとそばにいたい。
でも、それは真理愛の未来を閉ざすこと。
俺にその資格はない。
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