偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
こっちに越してきた頃、父さんの入所準備や自分の引っ越しと何もかも新しいことばかりで慌ただしく過ごしていた。

ずっと熱っぽくて食欲がなくて体調が悪いのはわかっていたけれど、そんなことを言っていられないくらいやることがあって、1日1日をこなすのが精一杯だった。


「あれ?」
一人暮らしを始めて、自分のものしかない部屋の中でふと気づいたのは4か月後。

そういえば、こっちに来てから生理がない。

「嘘、まさか・・・」

この時、私は単純にうれしかった。
自分の家族ができたこと、その家族が敬の血をひく我が子であること。それは私自身が望ん結果。
世間知らずの私は命を一つ育むことがどれだけ大変なことなのかもわからずに、敬の分身を授かったことに浮かれて臨月までを過ごした。
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