偶然から始まった恋の行方～敬と真理愛～

トントントン。

午後８時。
私は大家さんの玄関をノックした。

「真理愛さん、どうしたの？」
「あの、敬也が熱を出してしまって」

この土地に知り合いにない私が頼るのは大家さんしかいなかった。

「それは大変ね。熱は高いの？」
「ええ、３９度を超えています」
「まあそれは苦しいわね」
「どこか病院へ行きたいのですが、どこがいいのかわからなくて」

この近辺の病院がさっぱりわからない私は、ネットで調べるよりも大家さんに聞く方が確実だろうとやって来た。

「大きいところが安心だから、皆川総合病院にしなさい。待ち時間はあるけれどここからも近いし、先生もみんないい人だから」
「わかりました」
「そうだ、おじいさんに車で送ってもらうわ」
「え、でも」
それはあまりにも図々しい。
「いいから支度をしていらっしゃい」
「は、はい」

大家さんの勢いに押される形で、病院へ行くことになった。