偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「もしもし」
「杉原先生?」
「ええ、今は小鳥遊です」
「ああ、そうか。ごめん慣れなくて」
「いえ」
慣れないのは俺も一緒。
油断すると、未だに『杉原』ですと名乗る時がある。

「どうしたんですか、珍しいですね?」

皆川先生とは仕事で会うことの方が多くて、電話をかけあうことは本当い珍しい。
友人である環の旦那さんだから個人的に話すこともあるが、こんな風に急な連絡が入ると少し怖い気さえする。
まあそれだけのことが過去にはあったわけだし。

「真理愛ちゃんと今でも連絡を取っているのか?」
「はあ?」
何をいきなり。

「真理愛ちゃんがうちの病院に来てるぞ」
「どこか悪いんですか?」
「それは・・・」
言いにくそうに皆川先生の言葉が止まった。

きっと個人情報だから詳しいことは言えないんだろう。
しかし、そもそも真理愛が皆川総合病院を受診したっていうのも十分な個人情報で、むやみやたらと話していいことではない。

「わざわざ連絡をくれるくらいだから、悪いんですよね?」
想像を膨らませながら、探りを入れてみる。

「ククク」
いきなり皆川先生が笑い出した。

何だよ、らしくもない。不謹慎だなあ。
自分でも段々不機嫌になっていくのを感じていた。
< 175 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop