偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
平日に大学病院で勤務して、週末のどちらかにここへ来る生活が、もう2年になる。
労働時間を考えれば大学病院の勤務だけにした方が絶対に楽なわけだが、俺はどうしてもこの病院での勤務にこだわりたかったし、状況に負けて逃げてしまうのは嫌だった。
何よりも、俺が逃げれば事件を自分のせいだと思っている環が傷つく。
だから、ここでの勤務を条件に大学病院への出向を了承した。

「花見先生。検査のオーダーしました?」
救急外来の看護師が、幾分固い声で研修医に聞いている。
それに対して、
「え、あぁ、すみません。今すぐに」
慌ててパソコンに向かう研修医。

「お願いします」
しっかりしろよと睨みながら、看護師は戻って行った。

まあ看護師にすれば患者さんにせっつかれているんだろうし、非は研修医にあるわけで言われても仕方がないだろう。
しかし、このままではチームワークが悪くなってしまう。

「花見先生、大丈夫?手伝おうか?」

俺はできるだけ穏やかに、一年目の研修医花見栞(はなみしおり)に声をかけた。
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