偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「敬也、太一君、おやつよー。おばあちゃまがホットケーキを焼いてくださったわよ」
庭に向かって一声。

あれ?
いくら広い庭でも聞こえないはずなはないのに、返事が聞こえない。


「敬也ー、太一君―」

大きなお腹をさすりながら庭へ出てみるけれど、やはり二人の姿は見えない。
おかしいなあ、どこへ行ったのかしら。

「どうしたの?」
私の声を聞きつけておばさまも庭に出ていらした。

「敬也と太一君の姿がみえなくて」
「それは大変ね」

2人とも勝手にどこかに行くような子じゃない。
近くにいるとは思うんだけれど・・・

「敬也ー、太一君―」

やっぱり返事は聞こえない。

「もしかして外に行ったのかしら?」
「え?」
おばさまの怖い一言で、私の動きが止まった。

まさか。
今まで一人で外に出たことなんてないし、外は車も通っていて危ないのに。

「とにかく、探してみましょう」
おばさまは家の外に向かおうとするけれど、
「待ってください、私が行きますから」

少し前から腰を悪くしているおばさまや産後の環さんに無理はさせられない。
元気な私が行く方がいい。

「でも、真理愛ちゃんに何かあったら・・・」
おばさまは出産間近の私を気遣ってくださるけれど、そんなことは言っていられない。

「大丈夫です。何かあればすぐに病院へ行きますから」
「でも・・・」

心配するおばさまと環さんを何とか説得して、私は家を飛び出した。
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