偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「今日はとってもかわいいね」
普段仕事で着るよりもオシャレなブランドのスーツを着たおじさんが私を見てつぶやく。

「当たり前でしょ、私が選んだ服だもの」
私が返事をするよりも先にママの方が答えてしまった。

確かに、お見合い用にと何着もの服を買ったのも、最終的にこのワンピースに決めたのもママ。
私はただ着せられたにすぎない。

大体、いつもの私ならワンピースなんて着ない。
身長が165センチもあるせいかかわいらしい格好は絶対に似合わないし、スカートも動きにくくて大嫌い。
ママが買って来なければ、今日もパンツスーツで出かけるところだった。

「さあ着くよ」

仕事以外では自分で車の運転をすることの多いおじさんも、今日はタクシー。
お相手のお家が手配してくださったっていうのもあるけれど、お見合いの席でお酒が出るのを見越してのことだろう。

「真理愛、失礼のないようにお願いね」
「はいはい」
わかってます。

後部座席に並んで座るママに、ぶっきらぼうな返事をした。
ったく、ママはいつまでたっても子供扱いなんだから。
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