偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
テキパキと処置を進めていく無駄のない動きにいつもながら感心してしまう。
俺が初めて出会った時から、皆川先生は完ぺきな人だった。

「大分悪いね」
「そうですか」

ある程度予想はしていたが、皆川先生が言うんだから相当悪いんだろう。

「家族は?」
「今連絡をとっています」

唯一の肉親は離婚した奥さんに引きとられた娘さんらしい。
電話もつながったから、すぐに来てくれるだろう。

「じゃあ、家族の到着を待って病棟に上がろうか」
「そうですね」

しばらくは入院になるだろう。
少しずつ落ち着いてきてはいるからこのまま回復するかもしれないが、急変する可能性もある。どちらにしてもまだ油断はできない。

「すみません、杉原先生」

皆川先生と患者の様子を見ている俺に、看護師が声をかけてきた。

「どうしたの?」
「花見先生が、患者の保護者ともめています」
はあ?

「何があった?」
「午前中に発熱で受診した3歳の女の子なんですが、診察と薬の処方だけで帰宅になって、家に帰ってからけいれん発作を起こして緊急搬送され戻ってきました。誤診だったんじゃないかってお母さんが騒いでいるんです」
「午前中診察したのが花見先生だったの?」
「はい。完全にお母さんに詰め寄られてしまって」

ったく、何をしているんだ。

「いいよ。ここは僕がいるから、行ってあげて」
「すみません」

俺は皆川先生に頭下げてから花見先生のもとに向かった。
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