偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「真理愛ちゃん、帰ろうか?」

おじさんが手配してくれた個室で一通りの説明が終わり、完全看護だから付き添いはいらないと言われ、おじさんとママは帰る支度を始めた。
でも、

「私、もう少しここにいたい」
せめて意識が戻るまで付き添いたいと主張してみた。

「ダメよ、帰りましょう」

やっぱり、ママはそう言うと思った。
ここに来てから、ママはお父さんの側に寄ろうとさえしないもの。
お父さんが搬送されたって知らせがきて、私が駆けつけて、おじさんが来るって言うから仕方なく来ただけ。
ママの意思でここに来たんじゃないのは見ていればわかる。

「真理愛ちゃん、今日のところは先生方にお任せしよう」
おじさんもこのまま帰ろうって言う。

「お父さんの意識はいつ戻るかわからないんですよね?」
納得できない私は、皆川先生の方を向いて聞いてみた。

「そうですね。今日かもしれないし、10日後かもしれない」
「じゃあ私、それまで側にいたい」
「真理愛ッ」
キーンと響くママの声。

一瞬にして病室は静寂に包まれた。
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