偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「真理愛ちゃん、今日のところはママの言うことを聞いて、一旦帰って明日また来ようよ」
いつものように優しく言ってくれるおじさん。

ママはすごい顔して私を睨んでいて、皆川先生と敬さんは黙っている。

「お父さんの意識が戻った時、側にいたいんです」
それでも私は意地を張ってしまった。

「何を言っているの。真理愛がいたって何の役にも立たないでしょう?」
「それでもいたいの」

役に立つとか立たないの問題じゃない。
目が覚めたとき一人じゃお父さんがかわいそうじゃない。

「あなたがわがまま言えば先生方にもご迷惑でしょ?いい加減になさい」
家にいる時のように青筋を立てたママ。

「迷惑なのはママでしょ。別にママに付き添えなんて言ってないから、帰ればいいじゃない。私はここにいますから」
「真理愛ッ」
大きな声で叫び、ママは立ち上がった。

マズイ、叩かれるかも。
直感的に身構えてしまう。

美人で、おしとやかで、物静かな女性に見えるママ。
でも実際は、自分の思うようにいかないとすぐにキレるし、手が出ることも珍しくない。
子供頃から何度か叩かれた記憶がある。

「ママ、落ち着いて」
さすがに危険を感じたおじさんがママと私の間に立ち、そっとママの肩を抱き寄せた。
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