偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
県立病院での勤務を終えて帰ってきた土曜日の夕方。
明日は週に一度の休日だから精一杯ゴロゴロして過ごそうと、早々に部屋の掃除と洗濯を済ませた。

明日は1日この部屋から出ない予定だ。
幸い食べ物は余るほどあるし、読もうと思って買った本の山もかなり高くなっている。

ブブブ ブブブ。
携帯の着信。

どうやら真理愛が近くまで着いたらしい。

「もしもし、部屋は505だから上がってきてくれるか?」
「部屋、変わったのね?」

そうか、以前来た時は同じ建物でも違う部屋だった。

「少し広いところに変わったんだよ」
「ふーん」

それ以上、真理愛は何も聞いてくることはなかった。

職員宿舎に用意されたマンションは医者や看護師などの異職種の職員とその家族が住んでいて、広さもまちまち。
1階は比較的狭い単身者用の部屋で、上層階になるにつれて広い家族用の間取りとなっている。
2年前の事件の時まで、俺もここの1階に住んでいた。
しかし、事件後に雑誌の記者ややじ馬が俺の部屋に待ち伏せすることが続いて、1階では不用心だろうからと5階に引っ越しをしたのだ。
< 44 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop