偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「おじゃまします」
「いらっしゃい」

しばらくして部屋へやってきた真理愛。
病院では座っている姿しか見ていなかったからか、以前会った時よりも背が高くなった気がする。
まあ、あの時はまだ高校生だったわけで、成長したとしても不思議ではないんだが。

「あの・・・これ」

遠慮気味に差し出された小さな紙袋。

「何?」
「えっと、お土産。・・・サボテンなんだけど」
「え?」
サボテン?

なぜ?
正直意味が分からず、首を傾げてしまった。

「だって、この家には食べ切れないほどの食べ物があるじゃない。それに、敬さんはお酒を飲まないでしょ?」
「まあ、確かに」

でも、だからってなぜ『サボテン』を?

「生花なんてもらっても困るでしょ?」
「ああ」
世話できなくて枯らしてしまうだろう。

「サボテンなら放置しておいでも育つから」

ふーん。
なるほどと言えばなるほどだな。

「それに上手に世話すればお花も咲くのよ」

時々水をやって、気が付いた時に窓辺に置いてやればそれでいいと言われ、なんとなく納得した。

「とにかく、ありがとう」

ちょうど手のひらに収まるサイズのポットを受け取り、リビングの棚に置いてみた。

「かわいいな」
「そう?」
「ああ」

当分はサボテンを見るたびに真理愛を思い出しそうだ。
< 45 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop