偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「片づけ手伝うわ」
2人で空にした容器をキッチンへ運ぶ真理愛。

「いいよ俺がするから。真理愛は持って帰る荷物を作ればいい」
「ぅん」

何だろう、さっきから元気がない。
段々、俺は不安になってきた。
もしかして真理愛は・・・

「ねえ、敬さん」
「ん?」

名前を呼ばれ振り返ると、真剣な顔をした真理愛がそこにいた。


「あのね、」
「うん」

「お父さんが倒れてからっずっと、眠れないの」

え?

明るく元気にふるまっていた真理愛からそんなことを言われるとは思っていなかった。
いつもと変わらず元気そうに見えていた。

「いくら目を閉じても眠れなくて、気がついたら朝になっているの」
「誰かに相談したのか?」

静かに首を振る真理愛。

「ダメだろう。このままじゃお前が壊れるぞ」
「・・・」

叱ったつもりは無い。
純粋に心配で言ったつもりだった。
けれど、

真理愛は大粒の涙をためて、まっすぐに俺を見返した。

「バカ」
吐き捨てるようにこぼれた言葉。

そうだな、俺はバカかもしれないな。
真理愛がどれだけ辛いかわかっているのに、優しい言葉一つ掛けてやることができないんだから。

俺は真理愛に歩み寄り、そっと抱きしめていた。
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