偶然から始まった恋の行方～敬と真理愛～

「すみません、お待たせしました」

午後１時。
ホテルのラウンジに、私はやってきた。

「大変な時にお呼びしてすみません」
「えっ、いえ」

どうやら待ち合わせの相手はお父さんのことを知っているようだ。

父親とは言え籍も外れているし一緒に住んでいるわけでもないのだから、お父さんが入院中なのはごく親しい人しか知らないはず。
おじさんやお母さんがわざわざ伝えたとは思わないから、もしかしたら調べたのかもしれない。

「顔色がよくありませんね。やはりお疲れですか？」
「いえ」

何だろう、目の前に座るお見合い相手、田中敦さんの言葉に含みを感じる。

今日、私は田中さんに呼び出された。
お見合いから半月以上たっているのに、断ることも会う約束もしていなかったから一度くらいは会った方がいいだろうと無理して時間を作った。
出来れば事情を説明して、田中さんの方から断ってもらえればいいなと思っていたんだけれど・・・どうだろう。