偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
ん?

見ると画面に私が映っている。
それも、敬さんと並んで歩いている画像。

「これだけじゃない。2人でマンションを出てくるところも撮れているからな」
さあどう言い訳するんだと詰め寄る田中さん。

私と敬さんの関係は田中さんが思っているものとは違う。
でも、何を言っても今の田中さんは納得しないんだろう。
であるならば、何も言う必要はない。

「よかったらここに部屋をとろうか?医者とやれるんだから、俺ともできるだろ?」
私のことをバカにしてあざ笑う顔。

冷静に考えれば、田中さんが言うことも間違ってはいない。
お見合いをしておきながら、体の関係がないとはいえ何度も敬さんのマンションに泊っている私の行動は不謹慎なのかもしれない。
でも、だからと言ってここまで侮辱される覚えはない。

「黙っていてほしいなら、行こうか?」
パシッと私の腕をつかみ、田中さんが立ち上がる。

「やめて」
私はやっと声を振り絞った。

「いいのか?言うことを聞かないと、あんたが何をしているのかばらすぞ」
「好きにしたら」

こういう男は一度言うことを聞いたくらいでおとなしくなったりはしない。
どんなことをしても要求を飲んではいけない。

それからしばらく、沈黙の時間が流れた。


「わかった。この件は高城先生の方に報告させてもらう」
田中さんは冷たく言うと席を離れて行った。
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