偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「ずいぶん怒らせたね?」
ドキッ。
いきなり背中から声がかけられて、固まった。
向かいに座っていた高城先生はすでにいなくなっていて、呆けたような俺だけが取り残された状態。
せっかくの昼食もすっかり冷めてしまっている。
「聞いていたんですか?」
振り返らなくても、声の主はわかった。
「聞く気はなくても聞こえてきたんだよ」
「へえー」
人が叱られているのを盗み聞くなんて、悪趣味な人だ。
その上わざわざ声をかけてくるなんて、意地悪だな。
「で、何があったんだい?」
背中合わせに座っていた席から隣に移ってきた皆川先生が、俺の顔を覗き込む。
「聞かないでください」
俺にだって話したくないことはある。
「普段から温厚な人に限って怒ると怖いんだぞ」
「知ってます」
目の前のあなただって、同じ種類の人間でしょう。と言いたいのをグッとこらえた。
「じゃあ、何をした?」
「それは・・・」
どうやら話さないことには開放してもらえないらしい。