偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「今どこ?」
感情のこもらない声で聞かれて、
「・・・」
反応できない。

「真理愛?」
少しだけ口調を弱め心配そうなお兄ちゃん。

こうなったら答えないわけにはいかない。

「・・・駅」

家から徒歩で10分ほどの最寄駅。
行く先のない私は雨に打たれながらここまでやって来た。

「お母さんと、喧嘩したのか?」
「うん」

やっぱり、お兄ちゃんにはすぐにバレた。

「うちに来るか?」
「・・・うん」

結局、私はお兄ちゃんに甘えてしまう。
わがままだとわかっていても、他に逃げ出す先がないから。

「迎えに行こうか?」
「いい」
自分で行ける。

「本当に?」
「大丈夫。電車で行くから」
「そうか、気を付けて来いよ」
「うん」
ありがとう。

お兄ちゃんのマンションまでは電車で駅3つ。
駅近だから、20分もあれば到着する。
いくら体調が悪くてもそのくらいは大丈夫だろうと、油断していた。
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