偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「38度7分。よくここまで電車で来たな」
「まあね」
体力と気力だけが自慢だから。

「バカ、褒めてない」
「・・・わかってるわよ」
「じゃあ、無理するな。父さんが知ったら心配するぞ」

それもわかっている。
だから家には帰りたくなかった。

小さな子供たちを毎日診察しているおじさんは、すごく心配性。
ただの風邪だと思っていても本当は大きな病気が隠れていたり、容態の急変で亡くなっていく子供たちを見ているからだとわかっているけれど・・・

「家に連絡するからな」
「えぇー」

無駄とは思いながら、お願い黙っていてと手を合わせた。

「ダメに決まっているだろ」

やっぱりそうだよね。
そんな事すればお兄ちゃんが怒られるものね。

「とにかく、濡れた服を着替えろ。俺のジャージで悪いけれど、新品だからな」
「うん、ありがとう」

さすがにリビングで着替えるわけにはいかず、着替えを受け取ってバスルームへ。
お兄ちゃんが支えようと手を出してくれたけれど、1人で大丈夫だからと歩き出した。
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