偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「うわ、ブカブカ」

メンズのジャージなんだから大きいとは思っていたけれど、ウエストを縛っておかないと落ちてしまいそう。
もちろん濡れた服よりはずっといいけれど、動きにくいことはこの上ない。

「なあ、大丈夫か?手伝おうか?」
なかなか出てこない私にお兄ちゃんの声がかかる。

「いい、自分でできるから」

お兄ちゃんに着替えを手伝ってもらうなんて絶対に無理。
たとえ医者をしているお兄ちゃんにとってはいつものことでも、私には受け入れられない。

「なあ」
「ん、何?」
ドアのすぐ前から声が聞こえ慌てて返事をする。

39度近い熱があると動くのが辛いし、着替えるのだって時々座って休みながらじゃないと動けないのに、焦らせないでほしい。

「今行くから、ちょっと待って」

これ以上時間をかければお兄ちゃんが入って来るんじゃないかと急いで着替えをすませた。
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