偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「そう言えば、杉原先生昨日はお休みだったんですね」
「ええ」

県立病院で勤務しなければいけない分土日をすべて休みにしてもらっている俺は、他の先生たちよりも休日が分かりやすいらしくて、平日に休みを取るとすぐにわかってしまう。
特に普段休みをとらない俺が平日に休みをとれば目立つのかもしれない。

「もしかしてデートですか?」
「はあ?」
んなわけあるかと突っ込みたいのを何とか抑えた。

確かに週に取れる休みは土日のどちらか1日だけで労働時間的に言えば働きすぎだし、自分のことをする時間がないのは間違いない。
それでも自分の仕事に対する責任は感じているつもりだし、遊びのために有休をとるほど若くもない。

「だってほら、先生もそろそろ結婚なんて話が出てもおかしくない歳でしょ?」

救急病棟の師長にしては明るくて元気なこの人は、時々空気を読まないことを言う。
そこがまた良いんだが、こう真正面から聞かれると答えに困ってしまう。

「すみません、私また余計なこと言いました?」
「いえ」

さすがに「昨日はお見合いでした」と告白する気にもなれず、ごまかしてしまった。
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