偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
何だろう、女の子と職員のやり取りを見ていてすごく胸が苦しくなった。

昔々、私がまだ子供だった頃、同じような思いをしたことがある。
その日もママは出かけていて、夜になっても帰って来なくて、そんなときに限って熱を出した私は一人で病院へやって来た。

「一人できたの?お家の人は?」
答えることのできない私は黙って首を振った。

ママはお仕事が忙しい。
真理愛のせいでママの邪魔をしたらダメ。
子供心にそんなことを考えていた。


「あんな小さな子を一人にしておくなんてね」
「かわいそうに、具合が悪いのに」
先ほどの女の子と職員とのやり取りを見ていた周囲のささやき。

確かに、周りの大人から見ればかわいそうな子かもしれない。
もしかしたらネグレストなのかもしれない。
でも、あの女の子にとってはそれが家族なんだ。

当時感じていた寂しさは、思い出したくない記憶。
私にとってのトラウマのはずなのに、とっても懐かしくて胸の奥をキュッと締め付けられる。
たとえ子供を置いて出かけていくような人でも、私はママが大好きで、いつもママを待っていた。
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