偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「あら、高城小児科のお嬢さんじゃないですか?」
「あ、はい」
ちょうど目の前を通り過ぎようとした女性に声をかけられ、反射的に返事をした。
「どうなさったの、お加減が悪いの?」
「いえ」
これだけの人が待合にいれば、知り合いに会ってもおかしくない。
目の前の女性は家のご近所さんで、会えば挨拶をする人のいい奥さん。
悪気はなく、本当に心配して声をかけてくれたんだろうと思う。
「知り合いのお見舞いに来ただけで」
「そう、ならいいけれど。お母様や大先生に何かあったんじゃないかと心配したわ」
大先生と呼ばれるのはおじさんのお父さん。年齢も80代だし、ママはもともと丈夫じゃないってみんな知っているから、そう思ったんだろう。
「あの、すみません」
女性と話し込んでいるすぐ横を、処置室から出てきた女の子が点滴スタンドを押しながら避けて歩く。
小さな女の子が扱うには点滴スタンドはとても大きくて、動くのも大変そう。
それでも一人できていれば自分でするしかない。
私もそうだった。
「かわいそうに、あんな小さい子が一人で。親は何をしているのかしら」
女性のつぶやき。
きっと、今この待合にいる人たちはみなそう思って見ているんだろうな。
「最近は困った親が多くて、大変ね」
これはきっと、高城小児科もそうでしょうって意味だと思う。
何年か前まで、私もあっち側の人間だったなんて思ってもいないことだろう。
「あ、はい」
ちょうど目の前を通り過ぎようとした女性に声をかけられ、反射的に返事をした。
「どうなさったの、お加減が悪いの?」
「いえ」
これだけの人が待合にいれば、知り合いに会ってもおかしくない。
目の前の女性は家のご近所さんで、会えば挨拶をする人のいい奥さん。
悪気はなく、本当に心配して声をかけてくれたんだろうと思う。
「知り合いのお見舞いに来ただけで」
「そう、ならいいけれど。お母様や大先生に何かあったんじゃないかと心配したわ」
大先生と呼ばれるのはおじさんのお父さん。年齢も80代だし、ママはもともと丈夫じゃないってみんな知っているから、そう思ったんだろう。
「あの、すみません」
女性と話し込んでいるすぐ横を、処置室から出てきた女の子が点滴スタンドを押しながら避けて歩く。
小さな女の子が扱うには点滴スタンドはとても大きくて、動くのも大変そう。
それでも一人できていれば自分でするしかない。
私もそうだった。
「かわいそうに、あんな小さい子が一人で。親は何をしているのかしら」
女性のつぶやき。
きっと、今この待合にいる人たちはみなそう思って見ているんだろうな。
「最近は困った親が多くて、大変ね」
これはきっと、高城小児科もそうでしょうって意味だと思う。
何年か前まで、私もあっち側の人間だったなんて思ってもいないことだろう。