偶然から始まった恋の行方～敬と真理愛～
無事お父さんの転院手続きを終えたあと、私は家に帰りたくなくなった。
お母さんに会いたくないわけじゃない。
今更中高生の頃みたいに反抗したいわけでもない。
ただ、高城の家に帰るのが辛かった。

もともとあそこは私の家じゃない。
ただお母さんのおまけで、高城の家に来ただけなのに・・・
今日病院で見た女の子のことを思い出して、久しぶりにそんな気持ちになった。


ピンポーン。
玄関のベルを鳴らす。

そこは県立病院職員宿舎用のマンション。
5階の505号室。
どうしても敬さんに会いたくて、ここへ来てしまった。


「はーい」
部屋の中から聞こえる声。


ドアが開き、顔をのぞかせる敬さん。


ドンッ。
私は何も言わず、敬さんに飛び込んでいった。


「真理愛、どうしたんだ？何かあったのか？」
不安そうな声で聞いてくる敬さん。

私は何も答えることができずに、ただ敬さんにしがみついていた。
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