偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
唇も、口腔内も、感覚器官なのだと初めて知った。
心許せる人と肌を合わせることがこんなに心地いいことだとは思わなかった。

玄関からベットルームまで抱え上げて連れて行ってくれた敬さんは、ものすごく器用に私の服を脱がしそっとベットの上に横たえる。

「いいのか?」
「今更?」
この状況で聞かれても困ってしまう。

ここまで来て逃げるつもりはない。
私は自分の意志で敬さんに抱かれるのだから。

「この先、俺は自分を止める自信がない。もし嫌なら叩いてでも、蹴ってでも、噛みついてでもいいから逃げてくれ」
「大丈夫、逃げないよ」
「じゃあ、遠慮なく」

もう一度唇を塞がれ、敬さんの手が私の体の上を滑っていく。

ん、んぅ。
くすぐったくて、時々刺激的な感覚に、声が漏れそうになるのを必死にこらえた。

「お願い、声を聞かせて」
「だって、」
はずかしいものと言いかけた声をふさがれた。

「ごめん、優しくできそうもない」
え?

苦しそうにつぶやいた後、敬さんが私の体へと唇を落としてきた。
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