星名くんには秘密がある
「俺、菓子ってのが苦手なんだよ。不味いって食われるより、甘いのが好きな奴に食われる方が気分良いだろ。欲しいなら、あんたにやるよ」
警告音がして電車が停車した。降りてくる足音の次に、乗り込む雑音が流れてくる。
離れてゆく車輪は、誰かが嘆いているような声だった。
咲いていた花がむしり取られたように、心にぽっかりと穴が開く。
誰もいなくなったホームは、清々しいくらいに静か。
虫、鳥、近くにある住宅からの生活音。普段は聞こえないノイズまで拾っている。
ーーパキッ。小枝の折れる音。枝?
顔を上げてばっちりと合った目に、心臓から列車がすれ違うような衝撃音が鳴った。
反射的に逃げる体勢を取る。そんな私の腕は星名くんによって引き止められた。
「もしかして、全部見てたの?」
小さく頷いた頭は下を向いたまま。恥ずかしくて上げられない。
紙袋を見たら、私が作った物だということは一目瞭然。振られたあげく一部始終を盗み聞きしていたなんて。
透明マントがあったら、今すぐにでも消えてしまいたい。
警告音がして電車が停車した。降りてくる足音の次に、乗り込む雑音が流れてくる。
離れてゆく車輪は、誰かが嘆いているような声だった。
咲いていた花がむしり取られたように、心にぽっかりと穴が開く。
誰もいなくなったホームは、清々しいくらいに静か。
虫、鳥、近くにある住宅からの生活音。普段は聞こえないノイズまで拾っている。
ーーパキッ。小枝の折れる音。枝?
顔を上げてばっちりと合った目に、心臓から列車がすれ違うような衝撃音が鳴った。
反射的に逃げる体勢を取る。そんな私の腕は星名くんによって引き止められた。
「もしかして、全部見てたの?」
小さく頷いた頭は下を向いたまま。恥ずかしくて上げられない。
紙袋を見たら、私が作った物だということは一目瞭然。振られたあげく一部始終を盗み聞きしていたなんて。
透明マントがあったら、今すぐにでも消えてしまいたい。