星名くんには秘密がある
きらいにならないで
実力考察をなんとか無事に終え、カレンダーは6月下旬に入った。教室に貼られた『体育祭まであと何日』のカウントダウンが0になる。
体操着を肩まで巻くし上げたり、応援の練習なのか騒いでいるのか定かでない大声を出して、今日の男子は気合いが入っている。
気怠げなあくびをしたり、緊張感のないトークを繰り広げる女子との温度差が激しい。
「あれから、何か動きあった?」
青いハチマキを結ぶ比茉里ちゃんが、遠目に瀬崎さんを見る。相変わらずスタイルが良くて、周りの男子にちやほやされている。
「特に、ないかな」
覚悟しなさいと言われてから、一度だけ会った。校舎を出たところで、偶然すれ違った拍子に呼び止められて。その時、早めにバレッタを付けていたから思い出したように聞かれた。
『それ、湊くんからもらったの?』
周りに人がいなかったからなのか。さらに整った顔を近付けて、ふんっと鼻で笑って。
『沙絢だって、インクの出なくなったペンもらったことあるんだから』
対抗意識で言われたのだと分かった。でも、その話を聞いて不安は高まった。
あえて使わなくなったものを貰ったのだとしたら、素敵だなと思ったから。
見た目や言動は当たりが強く感じるけど、きっと純粋な人なんだろう。
騒がしく人が群がる校庭に、深いため息がこぼれる。瀬崎さんのこと以上に、今は目の前にある現実が心配でならない。
「ずっと思ってたけど、なんか顔色悪くない? もしかして、アレ思い出しちゃった?」
「うん……たぶん大丈夫だよね」
「さすがに、今回はないと思うけど。またぶっ込んでたら……恨むしかない」
「……頑張ります」
体操着を肩まで巻くし上げたり、応援の練習なのか騒いでいるのか定かでない大声を出して、今日の男子は気合いが入っている。
気怠げなあくびをしたり、緊張感のないトークを繰り広げる女子との温度差が激しい。
「あれから、何か動きあった?」
青いハチマキを結ぶ比茉里ちゃんが、遠目に瀬崎さんを見る。相変わらずスタイルが良くて、周りの男子にちやほやされている。
「特に、ないかな」
覚悟しなさいと言われてから、一度だけ会った。校舎を出たところで、偶然すれ違った拍子に呼び止められて。その時、早めにバレッタを付けていたから思い出したように聞かれた。
『それ、湊くんからもらったの?』
周りに人がいなかったからなのか。さらに整った顔を近付けて、ふんっと鼻で笑って。
『沙絢だって、インクの出なくなったペンもらったことあるんだから』
対抗意識で言われたのだと分かった。でも、その話を聞いて不安は高まった。
あえて使わなくなったものを貰ったのだとしたら、素敵だなと思ったから。
見た目や言動は当たりが強く感じるけど、きっと純粋な人なんだろう。
騒がしく人が群がる校庭に、深いため息がこぼれる。瀬崎さんのこと以上に、今は目の前にある現実が心配でならない。
「ずっと思ってたけど、なんか顔色悪くない? もしかして、アレ思い出しちゃった?」
「うん……たぶん大丈夫だよね」
「さすがに、今回はないと思うけど。またぶっ込んでたら……恨むしかない」
「……頑張ります」