星名くんには秘密がある
最寄り駅である空泉高校前駅の看板が見えてきた。今、周りに生徒はほとんどいない。
「あ、あの……ふ、藤波くんっ!」
震える声を振り絞って彼を呼び止める。振り返った彼の表情には驚きの色が浮かんでいた。
どうしよう。もう引き返せない。
「あの……これ、部活で。良かったら、貰ってください」
言葉が途切れ途切れにしか出てこない。考えていた台詞も緊張で全て吹き飛んでしまった。
小刻みに震える手から紙袋を受け取った藤波くんは、「えっと、ああ……」と小さな声を出した。
困惑しているような吐息が混じっている。怖くて顔が見れない。
とりあえず受け取ってもらえたのだから、早く逃げ去りたい。そう思った瞬間には、足が動いていた。
風を切る空気が冷たく感じるほど、私の頬と心臓は熱を帯びている。
比茉里ちゃんの待つ校舎へ向かいながら、すれ違う彼の横顔を目で追う。星名くんだ。
流れる視線を交差させながら、私は夢中で走った。早く駅から遠ざかるようにと。
ーーこれ、部活で作ったんだとさ。
急がせていた足がのろのろと速度を落として、ぴたりと動きを止めた。まだ校門へ辿り着いていないのに。
声が聞こえたから。胸の奥から湧き上がって来た〝想像〟は、たぶん藤波くんの声。
嫌な予感がして駅の方を振り返る。電車は来ていないから、きっと彼はまだホームにいる。
「あ、あの……ふ、藤波くんっ!」
震える声を振り絞って彼を呼び止める。振り返った彼の表情には驚きの色が浮かんでいた。
どうしよう。もう引き返せない。
「あの……これ、部活で。良かったら、貰ってください」
言葉が途切れ途切れにしか出てこない。考えていた台詞も緊張で全て吹き飛んでしまった。
小刻みに震える手から紙袋を受け取った藤波くんは、「えっと、ああ……」と小さな声を出した。
困惑しているような吐息が混じっている。怖くて顔が見れない。
とりあえず受け取ってもらえたのだから、早く逃げ去りたい。そう思った瞬間には、足が動いていた。
風を切る空気が冷たく感じるほど、私の頬と心臓は熱を帯びている。
比茉里ちゃんの待つ校舎へ向かいながら、すれ違う彼の横顔を目で追う。星名くんだ。
流れる視線を交差させながら、私は夢中で走った。早く駅から遠ざかるようにと。
ーーこれ、部活で作ったんだとさ。
急がせていた足がのろのろと速度を落として、ぴたりと動きを止めた。まだ校門へ辿り着いていないのに。
声が聞こえたから。胸の奥から湧き上がって来た〝想像〟は、たぶん藤波くんの声。
嫌な予感がして駅の方を振り返る。電車は来ていないから、きっと彼はまだホームにいる。