唯くん、大丈夫?〜小盛り編〜
駆け込み乗車。
キーンコーンカーンコーン。
1日の終わりを知らせるチャイムが鳴り響いた。
私はいつも通りみんなに「まった明日ねー!バイバーイ!!」と言ってから急いで教室を出る。
美琴が何か言いたげにこちらを見てたけど、見ないフリ。
美琴、すまん。
早足で下駄箱に向かって靴に履き替えて、校門に行く。
そしていつも通り校門にもたれかかって唯くんを待ち伏せ、
…しない。
今日はしない。
校門を華麗にスルー。
なんならダッシュ。
全力ダッシュ。
短距離走の方のダッシュ。
帰宅部の羽根村、頭は悪いけど走るのには自信があります。
徒歩15分の駅までの道のりを、
私はまだ生徒がいないのをいいことに全速力で駆け抜ける。
だって、
どんな顔して会えばいいかわからない。
『悪いけど。もう俺のもんだから。』
あんな言い方…まるで、
「ハァッ、ハアッ、ハァッ、」
彼女みたいじゃん…!!
私はパニックになった頭を誤魔化すように体を動かした。