唯くん、大丈夫?〜小盛り編〜
ようやく呼吸が落ち着いたらしい唯くんは、
流し目で私の次の言葉を待ってる。
あのー、その流し目、絵になりすぎじゃないですか?
写真撮っていいですか?
写真集作って閲覧用と保管用に2万部刷っていいですか??
…おっと、違う違う。
今は目の前の事案を解決せねば。
「…唯くん、大丈夫?一回落ち着こう。今は美琴にフラれて気持ちが落ちちゃって、きっとわけわかんなくなってるんだよ。ね!」
「…?落ち着いてるけど。」
確かに、見た感じはすっごく落ち着いてる。相変わらずの無表情。
「いやいや!正気じゃないよ!あんな、まるで私が唯くんの…か、彼女みたいな言い方したり」
「あー…」
唯くんが天を仰いで何か考え込む。
「ね?でも大丈夫!みんなすぐ忘れるよ!私も聞かなかったことにする!ね!」
私は満面の笑みでダブルのグッドサインを胸の前でかかげた。
「…好きです。付き合ってください。」
「へ」
唯くんがまっすぐ私を見てる。
…親指立ててアホヅラしてる私を、見てる。
今、なんとおっしゃいましたか?
「好きです。付き合ってください。」
唯くんが整いすぎてる唇をもう一度動かして同じ言葉を紡ぐ。
「…ッ」
少し経ってようやく言葉を理解し始めた私の顔面が、みるみる熱くなる。
少なからずいる車内の人の視線、気になりませんか?
「好きです。付き合っ
「ッだーーーーーーーー!!!!!!」
耐えかねた私が叫んだ時、ちょうど次の駅に到着してドアが開いた。
「唯くん!ちょっと!!」
私は唯くんの腕を思い切り引っ張って、普段は全く使うことのない駅に下車した。