メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~
安西は今年三十二歳になったが、結婚願望が全くない。それどころか、真剣な交際すらしたことがない。体だけの付き合いの相手はいるが、結婚願望のなさそうな相手を選んでいる。
今回、結婚期間を三年にしたのは「お互い努力はしてみたものの、どうしても無理だった」という離婚理由がちょうど当てはまりそうな気がしたからだ。それに三ヶ月ごとに転々としながら調査をしてもらえれば、三年で十二の市町村を調べることができる。
祖父の縁談攻撃をかわし、地方の調査員も確保。これ以上に素晴らしい案があるだろうか。
安西はホクホクしながら、応募のあった市町村を確認し始めた。
「それにしても、気合入ってるな…」
花嫁候補になる女性の写真を添付してくれるようにお願いしたが、その写真がどれもすごい。大振袖を着て写真館で撮影したものが六割、ドレスの人が三割。残りの一割は正装ではないが、プロのカメラマンが撮ったと思われるような写真だ。
これは本人も承知の上で応募してきているのだろうか。写真の積極性からみて、おそらく本人も乗り気なんだろうけど。
自分で企画しておいて、こんなことを言うのは何だが、顔もみたことがない男の嫁に進んでなろうと思う女性の気持ちは到底理解できない。
呆気にとられながらポチポチと写真をめくっていた。