メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~

「……なんだこれは」

一枚の写真で手が止まる。これは何かの間違いだろうか。送り主を確認したら、関西にある小さな村だ。

花嫁候補の人の写真と指定をしたはずなのに、集合写真が添付されている。
十人ほどで写っているが、おそらく中央の女性が当人なのだろう。そう推測するのは、他の人がすべて高齢者だからだ。

データを拡大してみる。すると中央の女性は、なんとも言えない幸せそうな顔で笑っていた。周りの人もみんな笑顔だ。写真の隅に鏡餅が写っているので、正月の集いの写真ということか。

安西は写真の女性をじっと見た。

柔らかい笑顔、人の良さがにじみ出ている。安西がつきあってきた女性の中にはいないタイプだが、かなり綺麗な部類だろう。髪形の名称はよくわからないが、頭の上に髪の毛をクルッとまとめて団子のように乗せていた。前髪は横に流しているので、形の良い眉と涼し気な目元はハッキリと写っている。

「……吉永灯里(よしながあかり)二十六歳。職業『物書き』?」

応募の代表者は村長の吉永史郎となっているので、村長の娘か、孫か…
安西はじーっと写真を見つめていた。

「なんだ?気に入った子がいたのか?」
再び部屋に入ってきた今西が聞いてきた。

「この子、どう思う?」
タブレットをくるっと回して、今西の方に向ける。

「集合写真?また変わった写真をつけてきたな。中央の子がそうなのか」
まじまじと今西は写真を見つめた後、「やめとけ」とあっさり言った。

意外な答えが返ってきたので驚いた。
「どうして?」

「真面目ないい子そうだ。顔もかわいいし、きっと幸せな結婚ができるだろう。お前のくだらん計画に巻き込んでいい子じゃない」
今西は真剣な顔で安西を見た。

安西も同じくらい真剣な顔で今西を見る。
「いや、この子にしよう。地方に住んで住民にうまくなじめそうだ」

今西はじっと安西の顔を見ていたが、「後悔するなよ」と釘を刺した。


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