メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~
うーむと灯里は考え込む。そう言われればそうとも取れる。
連載物のコラムを書くのは灯里の目標だ。週に一度締め切りのある雑誌の連載を取れたと考えてみたら…
村育ちの灯里にとって地方を転々とすることは苦でもなんでもない。今から三年後なら二十九歳だ。もし、ちゃんとした結婚を望む気になったとしても、二十九なら遅すぎるということはない。今どきバツイチなんて珍しくもなんともないし…
徐々に顔が上を向く。
もしかすると、とてもいい話じゃないの?
村の役に立てて、仕事もゲット。おまけに家賃も光熱費もタダとなると…
灯里の様子をじっと見ていた今西はクスクス笑い出した。
「だんだん乗り気になってきたようですね?」
明け透けな態度を取ってしまって、思わず赤くなる。
「ハイ。なんだかとてもいい話のような気がしてきました」
「灯里さんのサポートは私がします。慰謝料もできるだけぶんどってやりますよ。やってみますか?」
今西はニヤッと笑った。
「はいっ!やってみます」
自らの生い立ちを簡単に説明し、「祖父母に心配をかけたくないので、偽装結婚であることは内緒にしたい」と言う灯里に今西は深く頷いた。
「実は私の妻は、社長の妹なんです。だから灯里さんと私は義理の姉弟ということになる。困ったことが起こったら何でも相談してください。家族が増えたと思ってもらえると幸いです」
今西の優しい言葉が嬉しい。灯里は笑顔で頷いた。
決めてしまえば、偽装結婚も楽しみになってきた。知らない土地を移り住むなんて、そう体験できることではないのだから。