メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~
「吉田のおばちゃんの栗料理は美味しいんです。栗ご飯、渋皮煮、天ぷらなんかもあるんですよ」
「へえ、栗を天ぷらにするんですか。それは楽しみだ」と今西は喜んだ。
その後、村を巡っていると、会う人みんなに「灯里ちゃん、帰ってたの」と声をかけられる。
「温かいいい村ですね」
「はい、自慢の故郷です」
今西が褒めてくれて、灯里は嬉しくなった。村を褒められること程嬉しいことはない。
家に帰ると、吉田のおばちゃんが早速いて、祖母と張り切って料理をしている。そこに、副村長や役場の人もやってきて、早い時間だが宴会でもするかということになった。
〝お客様が来たら宴会をする〟
田舎特有のもてなしだが、今西は慣れているのかネクタイを外してやる気満々だ。
野菜の煮物に山菜の天ぷら、川魚の塩焼きといった、なんでもない料理を美味しそうに食べてくれた。もちろん吉田のおばちゃんの栗料理にも感心し、おばちゃんを喜ばせている。出された地酒の半分がなくなったあたりで、役場の人が歌い出す。さっきまで表情が硬かった祖父も、普段通りの豪快な笑い声をとばしていた。
これが灯里の大好きな村の日常だ。
この村の役に立てるなら、偽装結婚も本望。
灯里も大きな口で料理を頬張り、にこやかに笑った。