メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~
『拝啓旦那様
今日は梅雨の晴れ間で、久しぶりに朝陽に輝く海を見ることができました。旦那様はいかがお過ごしですか?
先日、今西さんから次に移り住むのが信州だとお聞きしました。ジャムと白樺と湖。思い浮かぶのはそんなところですが、新たに住む土地にはどんな出会いがあるのでしょう。今からワクワクしています。
今いる島はレモン島としてアピールしてくださるそうですね。島の人たちの生活が少しでも豊かになりますように…。何とぞよろしくお願いいたします。
そうそう!晴夏さんは楽しい方ですね。晴夏さんたちがウチにいるときに、島の人たちが乱入してきて、夜通しの宴会で大騒ぎになりました。晴夏さんは歌って踊って大人気になっていましたよ。
旦那様は晴夏さんに似ていらっしゃるのでしょうか。少しだけそんなことを考えました。
さて、明日からは引っ越しに向けて荷造りを始めます。来週のお便りが島からの最後のメールになりますので、よろしくお願いいたします。末筆ながら今日も私は元気です。灯里』
「今西っ!お前、晴夏を島に連れて行ったのかっ」
椅子をひっくり返す勢いで安西は立ち上がった。
「義理の姉とはいえ、女性の一人暮らしの家に行くんだ。誰か連れていかないとまずいだろ。日帰りは無理なんだから」
当たり前だという顔で今西は言った。
「なぜ言わなかった。晴夏もなぜ報告してこないんだっ」
ぜーぜーと肩で息をするほど大声で安西は喚く。
「なぜお前に報告がいる。灯里ちゃんは俺がサポートしてるんだ。お前は名ばかりの夫なんだから関係ないだろ」
冷たく言いかえされて、安西はグッと押し黙った。